目次
前編
① 髪はなぜ生えているの?
② 髪は「毛乳頭」で育つ
③ 髪が育たなくなる原因とは?
④ 漢方では髪をどう考える?
後編
⑤ なぜ私は「頭皮」を一番大切にしているのか
⑥ 元気な髪は、元気な体から生まれる
⑦ 今日から始める髪を育てる養生
① 髪はなぜ生えているの?
~髪は見た目だけではなく、私たちの体を守る大切な器官です~
「髪は見た目をきれいにするためのもの。」
そう思われる方も多いかもしれません。
もちろん、髪は第一印象を左右し、その人らしさを表現する大切な存在です。
しかし、今回「薄毛」について学ぶセミナーを受けて改めて感じたのは、
髪には私たちの体を守るための大切な役割があるということでした。
美容師として38年間、たくさんのお客様の髪を見てきましたが、改めて髪の役割を知ることで、「だから頭皮を大切にしたい」と強く感じています。
髪は頭と頭皮を守っています
人の頭は、体の中でも特に大切な「脳」を守っています。
その頭を覆っている髪には、強い紫外線から頭皮を守る役割があります。
もし髪がなければ、頭皮は毎日直接紫外線を浴び続けることになります。
また、髪があることで頭と外気の間に空気の層ができ、暑さや寒さを和らげる働きもしています。
夏は強い日差しから頭を守り、冬は冷たい空気から頭部を守る。
髪は一年中、私たちの体を守るために働いてくれているのです。
毛根には神経が集まっています
もう一つ、とても興味深かったことがあります。
髪の毛が生えている毛根の周りには、たくさんの神経が集まっています。
風が吹いた時。
髪に何かが触れた時。
私たちは無意識のうちに、その小さな刺激を感じ取っています。
また、
「カラーがしみる」
「頭皮がかゆい」
「少し痛い」
そんな感覚も、この繊細な神経が感じています。
つまり頭皮は、とても敏感な場所なのです。
私は美容師として、
髪以上に頭皮を大切にしたい。
そう思う理由の一つがここにあります。
頭皮は、刺激を感じ取る大切な器官でもあるからです。
黒髪を作っているのはメラノサイト
髪の色を作っているのは、「メラノサイト」と呼ばれる色素細胞です。
メラノサイトがメラニン色素を作り、その色素が髪へ受け渡されることで黒髪になります。
年齢やさまざまな要因でメラノサイトの働きが弱くなると、メラニン色素を十分に作れなくなり、白髪が増えていきます。
同じメラノサイトでも、肌ではシミの原因となるメラニンを作り、髪では黒髪を作っています。
場所が違えば、同じ細胞でも役割が変わることは、とても興味深いですね。
髪は生きているようで、生えている部分は「死んだ細胞」
髪は毎日伸びているので、生きているように感じます。
しかし、頭から見えている髪の毛は、実はすでに角化した「死んだ細胞」です。
髪を切っても痛くないのは、そのためです。
本当に生きているのは、頭皮の中にある毛根です。
ここで細胞が分裂を繰り返し、新しい髪が作られています。
つまり、
髪を元気にしたいなら、見えている髪だけではなく、頭皮の中で働く細胞を大切にすることが重要なのです。
私が頭皮を大切にしたい理由
美容師として38年間、多くのお客様の髪を見てきました。
年齢が同じでも、髪にハリやコシがある方と、細くなってしまう方がいます。
その違いは、髪そのものだけではなく、
頭皮の状態
そして、
体全体の状態
が大きく関係しているように感じています。
今回のセミナーを受けて、その理由が少しずつつながってきました。
髪は頭皮の中で育ちます。
そして、その頭皮には神経が集まり、血液が巡り、栄養が届けられています。
だから私は、髪だけをケアするのではなく、
頭皮を大切にすることが、美しい髪への第一歩だと考えています。
次の章では、髪を育てる中心となる「毛乳頭」について詳しくお話しします。
毛乳頭は髪の工場ともいえる、とても重要な場所です。
髪はどのように栄養を受け取り、どのように作られているのでしょうか。
そこを知ることで、「なぜ頭皮を大切にしたいのか」が、さらに深く理解できると思います。
② 髪は「毛乳頭」で育つ
~毛乳頭は髪を育てる司令塔~
前章では、髪には頭や頭皮を守る役割があることをお伝えしました。
では、その髪はどこで作られているのでしょうか?
実は、髪が育つために最も重要な場所があります。
それが**「毛乳頭(もうにゅうとう)」**です。
あまり聞き慣れない名前かもしれませんが、私は美容師として、この毛乳頭こそが元気な髪を育てる中心だと考えています。
髪は頭皮の表面で作られるのではありません。
頭皮の奥深く、毛穴の一番下にある毛乳頭で育ち始めます。
ここは、髪の工場へ栄養を届ける「司令塔」のような存在です。
毛乳頭には毛細血管が集まっています
毛乳頭の周りには、たくさんの毛細血管が集まっています。
私たちが毎日の食事で摂った栄養は、胃や腸で消化・吸収され、血液に乗って全身へ運ばれます。
その血液には、髪の主成分である**ケラチンの材料となるたんぱく質(アミノ酸)**をはじめ、鉄や亜鉛、ビタミンなど、髪の成長に欠かせない栄養素が含まれています。
毛乳頭は、その血液から酸素や栄養を受け取り、髪を作る毛母細胞へ届ける「栄養の受け取り口」のような役割をしています。
つまり、髪は毎日の食事から摂った栄養が、血液によって毛乳頭まで運ばれることで育っているのです。
そのため、特定の栄養素だけを意識するのではなく、毎日の食事でさまざまな栄養をバランスよく摂り、しっかり消化・吸収できる体づくりが大切になります。
さらに、その栄養を毛乳頭まで届けるためには、血液の巡りも欠かせません。
髪は「食べたもの」と「血液の流れ」の両方によって育つ。
私は美容師として、このことをとても大切に考えています。
血液は「髪の食事」を運んでいます
私はお客様によく、
「髪は何を食べて育つと思いますか?」
とお話しすることがあります。
髪は口から食べ物を食べることはできません。
血液が運んできた栄養だけが、髪の栄養になります。
だから、毛乳頭へ届けられる血液の状態は、とても大切なのです。
血液の流れが悪ければ、十分な酸素や栄養は届きません。
反対に、血流が良く、栄養が豊富な血液であれば、毛乳頭はその栄養を受け取り、次の髪を育てる準備ができます。
美容師として長年お客様を見ていても、髪が元気な方は、頭皮の状態も良く、血色もきれいな方が多いように感じます。
毛乳頭は髪を育てるための「司令塔」
毛乳頭は、ただ栄養を受け取るだけではありません。
「髪を作り始めよう」
「細胞を増やそう」
という情報も周囲の細胞へ伝えています。
その指令を受けて働くのが、次にご紹介する毛母細胞です。
毛母細胞は毎日分裂を繰り返し、新しい髪を作り続けています。
つまり、
毛乳頭が元気であることが、元気な髪を育てる第一歩なのです。
美容師として思うこと
私は美容師として38年間、多くのお客様の頭皮に触れてきました。
だからこそ感じるのは、
髪だけを見ていても、本当の原因は見えてこないということです。
髪を育てるのは、頭皮の中にある毛乳頭。
その毛乳頭へ栄養を運ぶのは血液です。
だから私は、
「髪をきれいにしたい」
と思ったら、
まずは髪を育てる環境を整えることが何より大切だと考えています。
頭皮をいたわること。
血流を大切にすること。
そして、毎日頭皮に触れるものにも気を配ること。
それらすべてが、未来の髪につながっているのだと思います。
毛乳頭からの指令で髪は作られる
~一本の髪は、たくさんの細胞が協力して育てています~
前の章では、毛乳頭が血液から酸素や栄養を受け取り、髪を育てるための大切な「司令塔」であることをお話ししました。
では、その指令を受けて実際に髪を作っているのは誰なのでしょうか。
それが**毛母細胞(もうぼさいぼう)**です。
毛母細胞は、毛乳頭から「髪を作りなさい」という指令を受けると、細胞分裂を繰り返しながら新しい髪を作り続けます。
分裂した細胞は少しずつ上へ押し上げられ、やがて角化して私たちが普段見ている髪になります。
つまり、頭から出ている髪は何か月もかけて毛母細胞が作り続けた完成品なのです。
しかし、毛母細胞だけでは髪を作り続けることはできません。
毛母細胞にも寿命があるため、新しい細胞を補充する仕組みが必要になります。
そこで活躍するのが**バルジ領域(毛包幹細胞)**です。
バルジ領域には、毛包幹細胞と呼ばれる「髪の種」のような細胞があります。
必要に応じて新しい毛母細胞へと成長し、髪を作る工場を支えています。
つまり、毛母細胞が元気に働き続けられるのは、バルジ領域が新しい細胞を送り続けているからなのです。
そして、もう一つ欠かせない細胞があります。
それが**メラノサイト(色素細胞)**です。
メラノサイトは毛母細胞の近くでメラニン色素を作り、その色素を毛母細胞へ受け渡しています。
毛母細胞は、そのメラニンを髪の中へ取り込みながら成長することで、美しい黒髪になります。
年齢や遺伝、ストレスなどの影響でメラノサイトの働きが弱くなると、メラニンを十分に作れなくなり、色素のない髪が生えて白髪になります。
つまり白髪は、髪が白く変色したのではなく、色を作る力が弱くなった状態なのです。
ここまで見ていただくと分かるように、一本の髪は一つの細胞だけで作られているわけではありません。
毛乳頭は栄養を受け取り、髪を作る指令を出します。
毛母細胞はその指令を受けて髪を作ります。
バルジ領域は新しい細胞を補い、髪を作り続けられるよう支えています。
そしてメラノサイトは髪に色を与えています。
それぞれが役割を分担しながら、チームとなって一本の髪を育てているのです。
だから私は美容師として、髪だけをケアするのではなく、まずは毛乳頭をはじめとする細胞たちが元気に働ける頭皮環境を整えることが何より大切だと考えています。
次の章では、これらの細胞がどのようなサイクルで髪を育てているのか、「毛周期」と、髪が細くなったり抜けやすくなったりする理由について詳しくお話しします。
毛周期と、髪が育つために必要な栄養
~髪は毎日少しずつ生まれ変わっています~
ここまで、毛乳頭・毛母細胞・バルジ領域・メラノサイト、それぞれの役割についてご紹介しました。
しかし、これらの細胞が元気に働いていても、髪は一生伸び続けるわけではありません。
一本一本の髪には、それぞれ寿命があります。
髪は「毛周期(ヘアサイクル)」という生え変わりのサイクルを繰り返しながら、新しい髪へと生まれ変わっています。
毛周期は、大きく分けて3つの時期があります。
成長期は、毛乳頭から栄養や酸素が送られ、毛母細胞が活発に細胞分裂を繰り返し、髪が太く長く育つ期間です。
その後、髪の成長がゆっくり止まっていく退行期を迎えます。
そして最後は休止期です。
古い髪が自然に抜け落ち、新しい髪が生える準備が始まります。
このサイクルを何度も繰り返すことで、私たちの髪は生まれ変わっています。
健康な髪は「成長期」が長い
元気な髪が育つためには、成長期をできるだけ長く保つことが大切です。
ところが、さまざまな原因によって成長期が短くなると、髪は十分に育つ前に抜けてしまいます。
その結果、
細く短い髪が増え、
ボリュームが少なく感じられるようになります。
薄毛とは、髪がたくさん抜けることだけではなく、**「育つ前に抜けてしまうこと」**でもあるのです。
髪は毎日の食事から作られています
髪を育てる細胞は、自分で栄養を作ることはできません。
毎日の食事から摂った栄養が、胃や腸で消化・吸収され、血液によって毛乳頭まで運ばれます。
その栄養を受け取った毛乳頭が毛母細胞へ届け、初めて髪が作られます。
つまり、
髪は「食べたもの」と「血液の巡り」の両方によって育っているということです。
だから私は、特別な栄養素だけを摂るのではなく、毎日の食事を大切にしてほしいと思っています。
たんぱく質をはじめ、ビタミンやミネラルなど、さまざまな栄養をバランスよく摂ること。
そして、それをしっかり消化・吸収し、毛乳頭まで届けられる体であること。
それが、健康な髪を育てる土台になります。
美容師として思うこと
美容師として38年間、たくさんのお客様の髪と向き合ってきました。
髪だけを見ていても、本当の原因は見えてきません。
髪を育てているのは頭皮の中にある毛乳頭です。
そして、その毛乳頭へ栄養を運んでいるのは血液です。
だから私は、「髪をきれいにしたい」と思ったら、まずは髪を育てる環境を整えることが大切だと考えています。
頭皮をいたわること。
毎日の食事を大切にすること。
そして、血液がしっかり毛乳頭まで届く体づくりを心がけること。
この積み重ねが、5年後、10年後の髪を育てていくのだと思います。
では、なぜ毛乳頭へ十分な栄養が届かなくなってしまうのでしょうか。
次の章では、「冷え」「ストレス」「血流」など、西洋医学の視点から髪が育ちにくくなる原因について考えていきます。
③ なぜ毛乳頭に栄養が届かなくなるのか
~血液の巡りが、未来の髪を左右します~
ここまで、毛乳頭・毛母細胞・バルジ領域・メラノサイトが、それぞれ協力しながら一本の髪を育てていることをお話ししてきました。
では、なぜ年齢とともに髪が細くなったり、ボリュームが減ったりするのでしょうか。
その大きな理由の一つが、毛乳頭へ十分な栄養が届かなくなることです。
毛乳頭は、毛細血管から運ばれてきた酸素や栄養を受け取り、毛母細胞へ届ける「栄養の受け取り口」でした。
つまり、どれだけ優秀な毛母細胞やメラノサイトがあっても、毛乳頭へ栄養が届かなければ、元気な髪を育てることはできません。
血液は髪の栄養を運ぶ大切な存在
私たちが毎日の食事から摂った栄養は、胃や腸で消化・吸収され、血液に乗って全身へ運ばれます。
その中には、髪の材料となるたんぱく質(アミノ酸)をはじめ、鉄や亜鉛、ビタミンなど、髪の成長に必要な栄養素も含まれています。
しかし、血液はただ流れているだけではありません。
心臓から送り出され、細い毛細血管を通って、毛乳頭まで届いて初めて髪の栄養になります。
つまり、
「食べた栄養」と「血液の巡り」
この二つがそろって、初めて髪は育つのです。
エネルギー代謝も髪には欠かせません
毛乳頭へ運ばれているのは、栄養だけではありません。
細胞が働くために必要な酸素やエネルギーも一緒に運ばれています。
細胞は、届けられた栄養と酸素を使ってエネルギーを作り出し、そのエネルギーを使って細胞分裂を繰り返しています。
これをエネルギー代謝といいます。
さらに、細胞が元気に働くためには体液の環境も大切です。
私たちの体は約60〜70%が水分でできていますが、その水分は、たんぱく質やミネラル(塩など)とバランスを取りながら細胞の働きを支えています。
つまり、毛母細胞が元気に働くためには、
- 十分な栄養があること
- 酸素が届くこと
- エネルギーを作り出せること
- 体液の環境が整っていること
この4つがそろうことが大切なのです。
冷えは毛乳頭の働きを弱めます
美容師としてお客様を見ていて感じるのは、冷えのある方ほど頭皮が硬くなっていることが多いということです。
冷えによって血管が収縮すると、毛乳頭へ届けられる血液も少なくなります。
すると、毛母細胞へ十分な栄養が届かず、髪が細くなったり、成長しきれずに抜けやすくなったりすることがあります。
夏でも冷房で体が冷えたり、運動不足が続いたりすると、血液の巡りは低下しやすくなります。
髪を育てるためには、頭皮だけでなく、体全体の巡りを整えることが大切なのです。
ストレスで髪は「後回し」になります
さらに大きく影響するのがストレスです。
強いストレスを受けると、私たちの体は交感神経が優位になり、「命を守ること」を最優先にします。
その結果、心臓や脳など生命維持に重要な臓器へ、栄養やエネルギーが優先的に送られます。
髪は命に直接関わる器官ではありません。
そのため、髪は後回しになってしまいます。
毛乳頭へ届けられる栄養が不足すると、毛母細胞の働きも低下し、髪は十分に育たないまま抜けやすくなります。
また、ストレスによって分泌される**コルチゾール(ストレスホルモン)**は、毛周期を乱す要因の一つと考えられています。
美容師として思うこと
美容師として38年間、たくさんのお客様の髪を見てきました。
私は美容師として、お客様の髪を見ていても、この「水分を保つ力」がとても大切だと感じています。 ただ水をたくさん飲めばよいということではなく、毎日の食事からたんぱく質をしっかり摂り、果物や煮込んだスープ、ボーンブロスなど、自然な形で水分やミネラルを補うことも、細胞が働きやすい環境づくりにつながると考えています。
元気な髪の方には、ある共通点があります。
よく食べ、よく眠り、よく笑い、よく動く。
そして、あまり細かいことを気にしすぎず、毎日を前向きに過ごしている方です。
反対に、疲れをため込み、ストレスを抱え込み、体を休める時間が少ない方は、髪にもその変化が現れやすいように感じます。
髪は、体からのメッセージです。
だから私は、髪だけをケアするのではなく、血液がしっかり巡り、毛乳頭まで栄養が届く体づくりを大切にしていただきたいと思っています。
次の章では、西洋医学とは少し違う視点から、漢方では髪をどのように考えるのか、「髪は血余」「髪は腎の華」という考え方をご紹介します。
④ 漢方では髪をどう考える?
~髪は体の健康状態を映す鏡~
ここまでは、西洋医学の視点から「髪はどのように作られるのか」を見てきました。
毛乳頭が血液から酸素や栄養を受け取り、毛母細胞が髪を作り、バルジ領域が新しい細胞を補い、メラノサイトが髪へ色を付ける。
こうして一本の髪が育っていくことが分かりました。
では、漢方では髪をどのように考えるのでしょうか。
実は、漢方では髪だけを切り離して考えることはありません。
髪は、体全体の健康状態を映し出す「鏡」のような存在と考えられています。
そのため、白髪や薄毛、髪のツヤやハリ・コシの変化も、体の内側からのサインとして捉えます。
私は美容師として38年間、お客様の髪と向き合ってきました。
そして漢方を学び始めてからは、「髪だけを見る」のではなく、「体全体を見る」ことの大切さを強く感じるようになりました。
気・血・津液とは?
漢方では、私たちの体は
「気・血・津液(き・けつ・しんえき)」
の三つがバランスよく働くことで健康が保たれていると考えます。
気(き)
気は、生命エネルギーです。
呼吸をしたり、体を動かしたり、食べたものを消化・吸収したり、細胞を働かせたり…。
体のすべての活動を支える力です。
西洋医学でいう「エネルギー代謝」の考え方と重なる部分があります。
血(けつ)
漢方でいう血は、血液だけを意味するものではありません。
全身へ栄養を届け、体を養う働き全体を「血」と考えます。
毛乳頭へ栄養が運ばれることも、この「血」の働きの一つです。
血が不足したり、巡りが悪くなったりすると、髪へ十分な栄養が届かなくなります。
津液(しんえき)
津液とは、血液以外の体液です。
涙、唾液、リンパ液、細胞の水分など、体を潤す働きをしています。
津液が不足すると、髪も乾燥しやすくなり、パサつきやツヤの低下につながります。
髪は「血余(けつよ)」
漢方には、
「髪は血余」
という有名な言葉があります。
これは、
「髪は、血が十分に満たされたあとに育つもの」
という意味です。
私たちの体には優先順位があります。
まず命を守るために、
脳
心臓
内臓
などの重要な臓器へ栄養が送られます。
そのあと、余裕があって初めて髪へ栄養が回ります。
だから髪は「血余」。
つまり、「余った血で育つ」と考えられているのです。
この考え方は、西洋医学でお話しした「ストレスがかかると髪は後回しになる」という仕組みとも、とてもよく似ています。
髪は「腎の華」
もう一つ、漢方で大切にされている言葉があります。
それが
「髪は腎の華(じんのはな)」
です。
漢方でいう「腎」は、腎臓だけを意味するものではありません。
生命力、成長、老化、生殖、骨、歯、耳、髪などを支える「生命エネルギーの貯蔵庫」のような存在です。
若い頃は髪にハリやコシがあります。
しかし年齢を重ねると、白髪が増えたり、髪が細くなったりします。
漢方では、これは腎の働きが少しずつ弱くなる自然な変化と考えます。
だから、
腎が元気であれば、髪も元気。
これが「髪は腎の華」という言葉の意味です。
肝は血を蓄え、気を巡らせる
髪に深く関係するもう一つの臓が「肝」です。
漢方では肝には、
血を蓄える
そして
気の流れを整える
という働きがあります。
ストレスが続くと、
「肝気鬱結(かんきうっけつ)」
という状態になり、気の流れが滞ります。
気が巡らなくなると、血も巡りにくくなります。
その結果、毛乳頭へ届けられる栄養も不足しやすくなり、髪にも影響が現れると考えられています。
美容師として思うこと
美容師として長年たくさんのお客様を見てきましたが、
髪だけを見ていても、本当の原因は分からないと感じています。
西洋医学では、毛乳頭や毛母細胞など髪を作る仕組みを知ることができます。
そして漢方では、気・血・津液や五臓という視点から、体全体とのつながりを考えます。
私は、この二つの考え方は対立するものではなく、お互いを補い合うものだと思っています。
だからこそ、
白髪を隠すこと、
薄毛を隠すことだけではなく、
「元気な髪が育つ体づくり」
を大切にしたい。
それが、私が美容師としてお客様へお伝えしたいことです。
次の章では、美容師である私が「なぜ頭皮をここまで大切に考えているのか」、そして石油系界面活性剤や人工香料など、毎日使うものが頭皮環境へ与える影響についてお話ししていきます。
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